言葉はコミュニケーションや表現の一つに過ぎません。それは当たり前のことなのですが、療育活動をしているとつい忘れがちになります。夏休みの一コマから、私が学んだことをお伝えします。
息子氏の発話は、同学年の子と比べるとまだゆっくりしています。発話の発音そのものの間違いは少しずつ減ってきており、言葉のボキャブラリーも少しずつ増えてきています。しかし、2語以上になるとコミュニケーションが難しくなるという問題には、まだ大きな改善が見られません。
ここ最近、言語聴覚士さんとの会話で、言葉の発話が難しい場合、文字(筆談)や意思表示絵カードを利用するのも一つの方法ではないかという提案がありました。何と言うべきかわからない、どのような音を出せばよいのかわからない時、話すことよりも、補助手段を用いて自分の意志を伝える方が良いのではないかという考え方です。
「意思表示絵カード」というツールは、私も初めて知りました。これは、何をしたいのかを絵で示したカードのことを指します。単に行動や状態を示すものだけでなく、感情を表現するカードもあります。さまざまなバリエーションが各オンラインショップで販売されています。
以前、効果が得られずに中断した方法でも、時間が経って再度試してみると効果があることもあります。その一例が絵の描画です。以前、ペンでの描画を試してみましたが、それには興味を示さず長続きしませんでした。しかし、最近100円ショップで見かけたアートパレット(絵の具のように専門的ではないが、様々な色が既に塗られているもの)を与えてみたところ、熱心に描き始め、感情を表現してくれました。
その1つがこちら。
この絵を描く数日前、私たちは子どもを連れて海に行きました。その時の風景の美しさや楽しさが強く印象に残っていたようで、息子氏はそれを生き生きと描き出しました。オレンジ色の大きな浮き輪に私と息子が浮かび、楽しく遊びながら、嫁と妹は浜辺で砂遊びをしていました。その様子が絵にしっかりと表現されていました。
彼は当日の風景や出来事、楽しかったことなどを鮮明に記憶していて、それを絵として具体的に描き出すことができます。しかし、それを言葉や音として伝えるのは難しいようです。このことを絵を通じて理解することができたのは、私にとって大きな発見でした。コミュニケーションの難しさから、彼が物事をすぐに忘れてしまっているのではないかとさえ思っていたのです。
言葉は表現の方法の一つにすぎない。それを息子氏の絵から私は学べました。
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