わが子の発達検査をふりかえる -知的な「凹凸」と向き合う日々-

自閉症スペクトラム(ASD)

子どもの成長について「少し周囲と違うかも?」と感じたとき、親としては不安や戸惑いが募ります。
わが家では、当初「少し遅いかもしれない。でも、そのうちどうにかなるだろう」と思っていました。しかし、当時通っていた幼稚園で再三にわたり「言葉の遅れや日々のやりとりに違和感」があると先生から指摘があり、発達検査・知能検査を受けてみることになりました。その結果、「ASD(自閉スペクトラム症)」という見知らぬ単語に関わることとなり、以降も定期的に検査を受けてきました。

この記事では、過去から現在までの主な検査結果や数値を交え、気づきや家庭・学習現場での取り組みをまとめています。どなたかの参考になれば幸いです。


発達検査の推移

2022年(4歳8か月時):新版K式発達検査2001

この時は2回目の検査でした。
検査項目は「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」の3領域。各項目で発達指数(DQ)発達年齢(DA)が示されます。

領域発達年齢発達指数
全体4歳2か月89
認知・適応4歳9か月102
言語・社会3歳7か月77
  • 認知・適応は年齢相応(模様構成、図形の模写、積み木など視覚・空間系の課題)
  • 言語・社会は1年ほどの遅れ(数の課題や名前の復唱、絵の名前など、語彙や会話課題)

用語補足

  • 新版K式発達検査…幼児~小学生の全般的な発達水準を、「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」の3領域で評価する心理検査です。
  • 発達指数(DQ)…同年齢の平均と比べた発達の進み具合(100が平均)。
  • 発達年齢(DA)…子どもの発達が「何歳相当か」を数値化したもの。

2023年(5歳1か月時):新版K式発達検査2020

3回目の発達検査です。傾向は前回と大きく変わらず、特に言語面の遅れが際立っていました。

領域発達年齢発達指数
姿勢・運動5歳1か月99
認知・適応4歳72
言語・社会4歳1か月83
全領域4歳1か月83

特徴と観察所見

  • 姿勢や運動は年齢相応
  • 認知・適応(視覚で見て考える、模倣やパズル)は苦手さも見えるが、比較的良い
  • 言語・社会(会話、説明、物語理解、気持ちの表現)が顕著に遅れ
  • 単語での返答やジェスチャーが多く、文章での説明が苦手
  • 家庭では日本語と中国語のバイリンガル環境なので、検査で十分に日本語力が発揮できていない可能性も指摘がありました

2024年(6歳4か月時):WISC-V(ウェクスラー式知能検査)

小学校入学前後で「より詳しい特性を知りたい」との思いから、WISC-Vを受検しました。これは「知能検査」の中でも細かい領域ごとの指数が出るタイプです。

領域スコア(指数)
言語理解(VCI)76
視空間(VSI)125
流動性推理(FRI)124
ワーキングメモリ(WMI)69
非言語性能力(NVI)115
一般知的能力(GAI)105
認知熟達度(CPI)79
全検査(FSIQ)約100前後

用語補足

  • WISC-V…6歳~16歳対象の知能検査。5つの主な指標で子どもの知的特性を多角的に測定します。
  • 言語理解(VCI)…言葉で物事を考える力、語彙力、言語表現
  • 視空間(VSI)…目で見たものを頭の中で組み立てたり、空間的に考える力
  • 流動性推理(FRI)…図形やパターンからルールや関係性を見つけて推理する力
  • ワーキングメモリ(WMI)…聞いた情報や一時的な指示を覚えて処理する力
  • 非言語性能力(NVI)…言葉に頼らずに考える力
  • 一般知的能力(GAI)…主に言語理解・視空間・流動性推理をもとにした全体の知能水準
  • 認知熟達度(CPI)…ワーキングメモリ・処理速度など作業的な能力
  • 全検査(FSIQ)…全体的な知能指数

特徴と観察所見

  • 「視空間」「流動性推理」は非常に高い(125・124):パズルや図形問題が大好きで、複雑なパターンもよく分かる
  • 「言語理解」「ワーキングメモリ」はかなり低い(76・69):聞いて理解・覚える課題や、言葉での説明が極端に苦手
  • 得意不得意の「凹凸」が極めて大きい
  • 言語課題ではストレスが強く、発語も不明瞭。短い返答なら可能だが、聞き返されると黙ってしまうことが多い
  • 数唱や記憶の課題では、教示自体が理解できず得点できないことも
  • 書字も苦手で、語順や音の順番が入れ替わる(例:「つくえ」が「つえく」になる)
  • 家族でさえ、発話が聞き取りにくい場面が多い

学習支援現場での日常

4歳頃から児童発達支援サービスや放課後等デイサービス等を利用しています。その記録からも、得意・不得意の差が如実に現れています。

  • 助詞や文の組み立て、語彙や説明力の強化に重点を置いた支援
  • 単語で返答しがちだが、徐々に文や理由説明の練習を重ねている
  • ルールのあるゲームや将棋、パズルなど「視覚的な課題」は意欲的に取り組める
  • 音読は単語単位から始め、内容理解を意識して練習中
  • イラストや図を使ってヒントを与えると理解が進みやすい

「話すこと」の難しさが続く一方で、「見て考える」「構造をつかむ」力は年齢を超えて強みとなっている印象です。


家庭での取り組みと気づき

家庭では、本人が安心して話せる環境作りに力を入れています。正確な日本語にこだわるよりも、「伝えたい気持ちを受け止める」「話してみたいという意欲を育てる」ことを大切にしています。そのため、細かい表現の違い、発音の歪さ、イントネーションの不安定さなどは気にせず、まずは「表現したい・伝えたい」という意思を尊重しています。

また、好きなものを題材に言葉や表現を増やす工夫、PCやタブレット、写真やイラストなど多様なコミュニケーション方法を積極的に取り入れています。


その後から今に至るまで

発達検査や知能検査の指数(スコア)は、子どもの得意・不得意を「見える化」する大きなヒントにはなりますが、それだけで全てが決まるわけではありません。これは全ての医師や療育関係者が口を揃えて言うことです。
私も実感していますが、子どもの「強み」を活かしつつ、苦手な部分も無理なく支援する工夫が日々の成長につながると感じています。

確かに弱いところの補強がいつの日にか必要になるかもしれません。ただ、まずは強みを実感してもらい、自己肯定感を持ってもらうことが一番大切だと思います。

知的発達に「遅れ」や「でこぼこ」があっても、成長のスピードは本当に人それぞれ。焦らず、その子に合った環境・方法を見つけることの大切さを改めて感じています。一番やってはいけないのは、他の子と比較すること。それは兄妹でも同じです。


おわりに

今後も「できること」を積み重ね、本人の自信や意欲につながるよう、寄り添い続けたいと思っています。
同じ悩みを抱える方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

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