親は子どもの幸せと健康を最も願う存在です。これは障害を持つ子どもの親も例外ではありません。むしろ障害という課題に対して、一層深い願いを持っているかもしれません。そのような親が子どものセラピストになれるのでしょうか。これは、現在私が抱えている疑問の一つです。
心理学と臨床心理学
私自身が子どもの問題に直面するまで、心理学には全く興味がありませんでした。私自身にはASD(自閉スペクトラム症)の特徴があるように思える部分もあり(そして私はおそらくASDと思われます)、そのため他人に対する興味や関心を持つことはほとんどありませんでした。子どもが私が初めて真剣に関心を持った対象となりました。
療育を進める中で、心理学に近い言葉である「臨床心理学」に触れることになりました。資格名に「臨床心理士」という言葉がありますが、私は療育と関わるまでこの資格すら知りませんでした。
心理学では主に人間の心の仕組みについて学ぶようです。その知識を基盤にして、人間がより良い生活を送る方法を追求します。臨床心理学では、心理学の知識を基に、人間がどのようにして心のバランスを崩すのか、そのバランスをどのように回復するのか、バランスを崩さないためにどのような生活が有効なのか、人の癒しや成長をどのように促進するのかということを学ぶようです。ケアを学ぶのが臨床心理学であり、その実践者が臨床心理士(セラピスト)ということのようです。
臨床心理士の認定団体であり、公益財団法人である日本臨床心理士資格認定協会には、臨床心理士について次のように記載されています。
臨床心理士は、人(クライエント)にかかわり、人(クライエント)に影響を与える専門家です。しかし、医師や教師と異なることは、あくまでもクライエント自身の固有な、いわばクライエントの数だけある、多種多様な価値観を尊重しつつ、その人の自己実現をお手伝いしようとする専門家なのです。
http://fjcbcp.or.jp/rinshou/about-2/
セラピストに求められるもの
このケアをサポートする専門家(セラピスト)に何が求められるのか。今回は子どもを対象としているので、遊戯療法の創始者と言われるバージニア・アクスラインの書籍を見てみると、セラピストの8つの原理が記載されてます。
- セラピストは、子どもと暖かい友好的な関係をつくるようにしなければならない。そうすれば、よいラポールも早急に確立される。
- セラピストはあるがままの姿の子どもを受容する。
- セラピストは、子どもとの関係において、 許容的な感情をつくりだすようにする。
- セラピストは子どもが表出している感情を敏感に察知し、これらの感情を子どもにオウム返しに返してやり、自分の行動を洞察しやすいようにしてやる。
- セラピストは、子どもに自分自身の問題を解決する機会さえ与えるなら、 子ども自ら解決できる能力を持っていることを深く信じて疑わない。選択し、変化しはじめるか否かは、子どもの責任にしておく。
- セラピストは、かりそめにも子どもの行動や会話に指示を与えることのないようにする。 子どもがリードをとり、 セラピストが従う。
- セラピストは治療を早くしようなどとはしない。 治療は徐々に進歩する。
- セラピストは、治療を現実の世界に関係づけておくのに必要な、また、子どもに治療関係での責任を自覚させるのに必要な制限を与えるだけである。
来談者中心療法 (心理療法プリマーズ) P.41より抜粋
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親とセラピスト
親は、基本子どもとずっと一緒にいるはずです。子どものことを見守り、心配し、子どものために何かをしたいという気持ちを持っているがために、上述のようなセラピスト的な振る舞いは、困難を伴うかもしれません。
遊戯療法では、子どもが自発的に行動を起こし、その行動を通じて自己表現や問題解決の能力を育むことが目指されます。これは、子どもに指示を出すのではなく、子どもが自身の感情や考えを理解し、それに基づいて行動を起こすことを助ける役割を果たすことを意味します。
親としては、子どもが困難に直面している時にただ見守るだけでなく、なんとかして助けたいという強い衝動が生まれます。その結果、指示的な行動を取ることが多くなりがちです。そのため、親がセラピストの役割を果たすことは、難しいと感じるのは自然なことかもしれません。
外部の療育機関やセラピストは、セラピストとしての役割を果たすことが難しい親たちの支援者であります。一方で、療育の提供は引っ越しやセラピストの交代により、一時的に中断されることもあります。そのような期間中、親が一時的にセラピストの役割を担うことは、理にかなっていると私は考えます。
親がこの療育問題に遭遇したとき、自身がセラピストになるための学習や資格取得するというケースどのくらいあるのでしょうね?
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