親が自分の子の障害を疑い始めたキッカケはいろいろでしょう。そして、大多数の人々は、自分の子供に障害があるという可能性を最後まで否定し、さまざまな努力を尽くすのではないでしょうか。私もその例外ではありませんでした。
まずは聴力を疑った
前回の記事では、表出性言語障害と診断されるまでの経緯をお伝えしました。しかし、その結論に至るまでに、実際にはさまざまな取り組みを行っていました。
私が最初に疑問を感じたのは聴力でした。言葉を発する前に、まず音を覚えなければなりません。しかし、息子の耳に入ってくる音が微弱であったり不正確であった場合、音を記憶したり模倣したりすることができないのではないかと考えました。
当時の息子は全く言葉を発することはありませんでした。せいぜい、意味をなさない喃語程度でした。3歳近くになっても喃語が続いていたので、もしかしたら耳に何らかの問題があるのではないかと思ったのです。そして、その問題に対処すれば、劇的に話す能力が改善するかもしれないと期待していました。
そのように一発逆転の解決策を求め、希望を抱くのは、親としての自然な反応なのかもしれませんね(笑)
私たちは簡易的な聴覚検査を耳鼻科で行いました。医師は耳の問題は無いと診断しましたが、はっきりとした反応(はいやいいえなど)がないため、精密検査を提案されました。それで、専門の施設でさらに検査を行うことにしました。自動ABR(聴性脳幹反応)検査で、これは子どもが寝ている間にイヤホンからささやかな音を流し、内耳の蝸牛から先の聴神経、脳幹までの反応を頭皮に取り付けた電極で検出し、自動的に判断するものです。この検査の特徴は、子どもが反応を示さなくても検査が可能である点です。
その時私たちは海外にいて、この精密検査は任意検査だったため、全額自己負担となりました。今、見返してもかなり高額だったことがわかります。約1,200SGD(シンガポールドルで、当時の為替レートで約11万円)もかかりました。
息子氏は、小さい頃から検査等にはとても素直で、このときもしっかりと協力してくれました。その協力的な態度から、再び「この子に障害があるはずがない」という思考に陥りました。
検査結果は『問題なし』でした。1年後に別の機関でも同じ検査を行いましたが、こちらも結果は問題なし。もちろんこれは喜ばしい結果ではありますが、それは同時に私たちの期待していた一発逆転の可能性を打ち消す結果でもありました。
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